産経新聞 2008.3.2 半藤一利

【私が見た 映画「明日への遺言」】作家・半藤一利さん

半藤一利さん:『戦士の遺書−太平洋戦争に散った勇者たちの叫び』という本の中で岡田資中将について書いたことがある。責任を逃れようとする軍人が多かったなか、B級戦犯となり、軍事裁判を一人で戦い抜こうとした姿は、悲惨な昭和史に光る毅然(きぜん)たる魂のようだ。あれだけ立派に自分の命令の責任を取り、命令に従った人の将来を考えた人はいない。名将といっていい。

このような映画が製作されたことに驚いた。戦犯や軍事裁判について知らない人が増えた現代では、忘れられた過去だからだ。大岡昇平の原作『ながい旅』のテーマが伝わってくる。役者の迫真の演技もいい。日本人としてみるべき映画だ。