南京大虐殺を描いた映画への反応

「五月八月」について

→映画的には泣かせるいい映画、中国では宣伝が扇情的、被害人数などの説明などにだけこだわる。

南京大虐殺にまつわる映画の話」大泉 純子(読売テレビ放送記者)2006年12月13日
http://www.ytv.co.jp/blog/ura_news/2006/12/post_129.html

外国メディア担当部署がナーバスに:12月13日は、「旧日本軍が中国の南京に攻め入った日」。この日から6週間にわたって、「日本軍は略奪や婦女暴行、罪のない人々を次々に殺害した」とされるのが、いわゆる『南京大虐殺』です。犠牲者は中国政府の見解では、30万人以上とされています。

そもそも「これらの行為があったのか、なかったのか」という議論も続いていますが、ここでは私が体験した取材の裏話をお伝えします。2002年のこと……『南京大虐殺』を描いた「香港映画」が『中国大陸』でも公開されることになったのですが、この内容をめぐってある論争が起こりました。

映画のタイトルは、『五月&八月(May & August)』。「南京大虐殺で両親を殺害され2人きりになってしまった五月ちゃんと八月ちゃんという幼い姉妹の物語」です。
南京大虐殺そのものを描くというよりは、幼い姉妹の生き様を描いた映画なのですが、映画の「ポスター」に書かれた宣伝文句に待ったがかかりました。「南京大虐殺で女性のレイプシーンを描いた初の作品」というセンセーショナルな文言です。観客の興味をそそるこの手の宣伝は、きわど過ぎるという理由……まぁ、これは理解できます。
『南京市』を管轄する『江蘇省』の「外国メディア担当部署」に取材を申し込んだところ、許可がなかなか降りませんでした。かなりナーバスになっていることがうかがえます。

とりあえず「口頭で取材OK」といわれたので、「初日のプレミア上映」取材のため、一路『南京』へ向かいました。『上海』から『南京』までは、車で4時間くらいです。さっそく映画館へ赴くと、結局「問題の部分を黒く塗りつぶしたポスター」が貼られていました。

その後、映画会社の担当者と会うことになっていたのですが、約束の時間になっても、誰も現れません。ようやく電話が通じ、事務所まで押しかけたものの、「取材は受けられない」との回答。
役所の許可は下りていることを伝えても、「聞いていない」の一点張り。このときあらためて、許可は口頭ではなくファックスをもらっておくべきだったと反省しました。本来ならば、ここで主演した香港の女優も参加した初日の舞台挨拶を取材するはずだったのに、会場にカメラを持ち込むことはできませんでした。

仕方ないのでチケットを買って会場へ。しかし我々が外国のメディアであることがすでにバレてしまっていて、チケットを持っているにもかかわらず、もぎりのおばちゃんに阻止され会場へも入れません。入り口でもめている間に舞台挨拶も終わってしまい、「あーあ……」でした。

泣かせるいい映画だったのだがその後に行われた一般上映を見ました。映画は、幸せな4人家族が日本軍の侵略によって、まず父親が殺されます。その後、熱を出した妹の八月ちゃんのために決死の覚悟で薬を買いに出た母親が日本兵に捕われてレイプされた上、殺されてしまいます。
2人きりになった五月ちゃんと八月ちゃんは、生きるために町をさまよい、さまざまなアクシデントを乗り越えながら、同じように孤児になった少年とサバイバル生活を送る、というストーリー。この2人の子役の演技が結構泣かせます。「南京大虐殺の描写の評価は分かれる」と思いますが、映画には余り詳しくない私としては、「泣かせるいい映画だ」と思いました。なぜ、この映画をめぐって論争が起きたのでしょうか。

ラストシーンで、『日本軍の侵略行為は、1937年12月13日から翌年の4月まで続いた』『犠牲者は30万人』という字幕が出ます。ここが問題だったのです。ネット上で湧き上がった議論は、「大虐殺は実際は6週間だったが、4月まで、と期間が実際より長い」「犠牲者の数を30万人と言い切っている」……つまり、「史実が歪曲されている」というものでした。

誤解を恐れずに言えば、「いちゃもんレベルの論争」です。「こんな低次元の論争のために思うような取材ができなかったのか」と思うと、腹立たしいのを通り越して、もうばからしい。会場から出てきた観客に感想を聞いてみると、「芸術作品としてみれば、少々事実と異なっていてもいいのでは」という意見もあれば、「史実を歪曲するなどもってのほかだ!」という怒りの声もありました。怒りの声については、本当にその人が自分の考えから思っていればいいのですが、ネット上での議論を鵜呑みにして根拠なく発言しているとしたら、「怖いなぁ」と思いました。

製作者サイドは、「この映画はドキュメンタリーではなく芸術作品である」とのコメントを出しました。それでいいと思うわ……。ちなみにこの映画、残念ながら日本ではまだ公開されておらずDVDも発売されていないようです。

映画「5月8月」の試写会開催 南京大虐殺が題材(「人民網日本語版」2002年11月8日)

南京電影製作所と香港寰宇娯楽有限公司が共同制作した映画「5月8月」の試写会が8日、南京で行われた。南京大虐殺を題材にした同映画について、試写会参加者からはそろって高い評価を得た。すでに国家広播電影電視総局の批准も受け、世界各地で行われる映画祭への出品が決まっている。また南京大虐殺で犠牲になった同胞を追悼するため、南京で12月13日から全国に先駆けて一般公開される。
同映画は南京大虐殺を題材としたこれまでの映画と異なり、流血の場面を直接扱ったカットがなく、幼い姉妹の家庭が体験した苦しみと、子どもの目を通じて見た虐殺という視点から南京大虐殺というテーマを扱っている。

記録映画「張純如・南京大虐殺」、北京で上映

2008-07-09 CRJonline中国国際情報局?
http://japanese.cri.cn/151/2008/07/09/1s121727.htm
 記録映画「張純如・南京大虐殺」が昨日、中国社会科学院で試写されました。この映画は後日、北京で上映される予定です。 映画の原作は、中国系アメリカ人作家の故アイリス・チャン(張純如氏)が発表した南京大虐殺事件に関する著作「ザ・レイプ・オブ・ナンキン」です。この映画は多くの史実資料を基に製作された作品です。 同映画はすでに、南京、上海、広州、シンセン(アメリカ、香港)などで上映され、観客から好評を博しています。

Nankingについて

レコードチャイナ(中国通信)2007-07-10
初日公開の地元館なし!?大虐殺伝える映画「南京」、マスコミ絶賛も興行は苦戦―中国
http://www.recordchina.co.jp/group/g9604.html
2007年7月3日、南京大虐殺の被害を伝える記録映画「南京」の中国公開が始まった。映画の出来について賞賛する記事が溢れかえる一方、それと反するように冷淡な映画館サイドの反応が明らかとなった。

大虐殺の現場である江蘇省南京市では、なんと3日の公開日に放映する映画館がないことがわかった。「今は夏休みが始まったばかりで、映画館では娯楽大作が目白押し。そんな中でこの映画を上映すれば、おそらく空席だらけになると予想される。そうなれば教育にもよくないし、国内外に誤ったメッセージを伝えることになりかねない」と、市内のある映画館関係者は語った。

同関係者によると、南京市では夏休み後にも映画「南京」の大キャンペーンを展開する計画が進められているという。初回上映は南京市中華門の城壁に投影するなど大がかりなイベントが準備されているのだとか。「非商業的な映画をヒットさせるには事前に綿密な仕掛けが必要だ。昨年の「東京裁判」がその好例で、今回も同様の仕掛けが準備されることになるだろう」という裏事情がある。別の映画館関係者も「こういう題材の映画は客の入りが悪い」と観客動員力を不安視して上映しないことを認めた。

上海市では各映画館で上映が開始された。市内7館では7月7日に7元(約110円)で観賞可能な割引キャンペーンを実施するなど、盛り上げに必死だが、今後続々と登場する夏休み映画のなか、いつまでスクリーンを確保できるのか、不安視されている。(翻訳・編集/KT)

Iris Chang: The Rape of Nanking

監督:Bill Spahic、Anne Pick
出演:オリヴィア・チェン、Pang Jin Feng、Jillian Rees-Brown
http://www.irischangthemovie.com/