毎日新聞 映画評 2008年2月29日（毎日jp）

大岡昇平のノンフィクション「ながい旅」の映画化。敗戦後、Ｂ級戦犯となった元東海軍司令官・岡田資（たすく）中将（藤田まこと）が、軍事法廷で信念を貫く姿を冷静な視点で描く。米軍の無差別爆撃を戦争犯罪と主張する一方で、捕虜処刑の全責任を負う姿に、日本人としての気骨や誇り、品格を浮き彫りにした。

小泉堯史（たかし）監督は戦争を題材にした映画にありがちな怒りや悲しみの表現を抑え、裁判シーンを延々と映す。語り口は硬くストイック。取っつきにくさは後半までついて回る。あくまで岡田中将の人間性に焦点を当て、無責任が横行する現在の風潮に警鐘を鳴らす。（鈴）

研ぎ澄まされたカメラワークが、岡田中将の心情を表して効果的。ただし、高潔感がありすぎて、凡人の心は揺さぶられなかった。（桂）